編集長

2007年4月20日 (金)

不快充満エレベーター

打ち合わせに呼ばれると、いつも憂鬱になるビルがある。

たかが地上13階建ての一面ガラス貼りのオフィスビル。ほそ長くて、逗くから見るとハーモニカみたいだ。1階ロビーは天井が高く、窓がでかくて太陽光がこれでもかと入ってくる。床が大理石なもんだから、スニーカーで行こうものならキュッキュッキュッキュッと神経にさわる音がする。汚れたジーンズで入ると、警備員に止められる。俺はもう何度も止められた。警備員は人の顔を覚えないバカ犬みたいな男で、飛猿(水戸黄門)に似ている。

このビルの目玉は、シースルーのエレベーター。たかが13階のくせに空へ直行するかのような透明なエレベーターで、まあまあ景色もいい。


Elv_1


事件はそこで起きた。
ドアが開くと、
不穏な空気が立ち篭めていた。
乗らなくてもわかるほどの臭い。



乗っている4人は、こちらを見ない。背広のおじさんと、その部下らしい若い男。作業服のおじさん。グッチのバッグを持ったケバい姉さん。皆、4角に位置し、俺と目線を合わせない。ケバい姉さんはご丁寧に「開」のボタンを押しっぱなし。乗らないわけには、行かない空気。

Erebotan

俺は最上階のボタンを押し、奥のまん中に位置どる。階数を示すボタンが光っている。地下から上がってきたエレベーターは10階と最上階13階に停まる予定だ。青空へ向かって、屁に包まれて、俺たちは上昇した。

ケバい姉さんは何げなく、左手軽く握りを鼻の下辺りに置いている。誰がしたの?臭いわ、というポーズ。部下らしき男は足をもぞもぞさせている。早く着かないかなあ、という無実のフリ。背広のおじさんと作業服のおじさんは何度かせき払いをした。

エレベーターは、6階に停まった。おばさんが3人も乗り込んできた。ビル全体が分煙になってからというもの、喫煙者は偶数階にある喫煙所に吸いに行くことになったから、こんなシーンが増えた。

乗り込んできた一人目のおばさんは顔のシワを中央に集め、鼻の前で手をブンブン振った。二人目のおばさんは大げさにセキこんだ。最後のひとりは眉をくねらせながら言った。

「すごいわね」

景色のことではないと思う。おばさんは、俺を見ていったような気がする。だが、何を証拠として、俺は無実を証明できるのだろうか。顔には出さない焦りも虚しく、6階で乗った三人のおばさんは、7階を押した。お前ら階段使え。


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7階に着く。おばさんたちは降りた。開いた扉から、新鮮な空気が入ってきた。臭いが薄れていくのが分かる。いいぞ。と思っていたら、部下らしい男が「開」のボタンを押しッぱなしで閉める気配がない。換気か?と思っていたら、背広のおじさんがゆっくりと降りて行く。部下もそれに続いていく。おいおい、汚ねえよ。お前ら降りる階じゃねえだろう。俺も降りようかと迷っている間に扉は閉じた。

だが、これで犯人はしぼられた。俺の推理はこうだ。上司のこいた屁に部下が気づかって「ここで降りましょう」と失礼なことをするわけがない。逆に「すいません、俺の屁くさくて」と上司を降ろそうとする部下がいるだろうか。普通に考えれば、そのまま目的地まで知らんぷりだ。少なくとも俺には恥ずかしくてできない。あいまいな理由だが、確信がある。二人はあくまでも無実を主張するために降りたように思える。

それほどの、臭いなのだ。明らかに下痢をしている。空気にいやなぬくもりがある。胸の奥からむかむかしてくる。できるだけ鼻で息をしないようにしているが、口から吸い込むのも気持ちが悪い。うつむき、セキでもするかのように握りこぶしを口に当てて、今、そのスキマから息を吸い込んでいる。これは、ケバい姉さんが発見した技だ。なるほど、これはあまり臭くない。

作業服のおじさんか、ケバい姉さんか。俺はエレベーターの隅で腕を組み、じっと二人の背中を見る。10階で作業服のおじさんは降りた。10階には、同じ作業服をきた人が沢山いて、内装工事が行われていた。ドリルの音が響き渡ったとき、俺は確信を得た。こんな環境なら作業服のおじさんは、いつでも派手に出せるではないか。わざわざ、エレベーターでする理由はない。


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ケバい姉さんは(もう観念したのだろうか)少し肩を落しているように見えた。口に当てていた軽く握った左手は、だらりと降ろされ、ぶらりとしている。右手のグッチのバッグは弱々しく揺れている。犯人の自供が終わったかのような静寂が降りてきた。もうすぐ最上階、13階だ。

思えば、なんだか可哀相な女性だ。地下で屁をしてしまった。その秘密を3人の男に知られてしまった。また男が一人乗ってきた。さらにおばさんも三人乗って、すぐ降りていった。逃げるように男たちが続いた。そして、最後に、バレた。

ケバい姉さんの腹から「キュウ」とイルカの泣き声みたいな音がした。

もうエレベーターは臭くなかった。いや、鼻がマヒしているだけなのかもしれない。怒る気持ちも、問いつめる言葉もなくなっていた。ただ、つかれていた。13階の扉は開いた。彼女は「開」のボタンを押しっぱなしにしている。俺は、先に降りる。何か声をかけようかと思ったが、何を言えばいいのだろう。俺には分からない。屁でもこいてやろうかと思ったが、そんな会話があるのか。人間には言葉がある。だが臭いは、いま、言葉以上に雄弁である。

オフィスのドアを開き、内線で担当者を呼んだ。担当者は、先程のケバい女を連れてきて「新人です」と紹介した。
俺は言葉を失った。
担当者は言った。

「何、知り合い?」

彼女の顔はひきつった。

「ええ、さっきエレベーターで‥」

彼女の香水は、すごくきつかった。

TEXT BY 編集長


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2007年1月24日 (水)

披露宴のスモーク

昨年師走。由緒正しき神社。
神様の前で当HPの編集長とその嫁が
永遠の愛を誓った。

数分後の披露宴。
扉が開き、新婦新郎が姿を現す。
耳なれた曲が聞こえてきた。

司会者は言う。
「新郎こだわりの一曲です!」

FIFAのテーマ曲だ。
W杯の選手入場のときに
かかるあの曲。
神社で誓った神は去り、
今度はジーコが神様に。

親戚一同、ご高齢が多く
何の曲かわかっていない。
またたくフラッシュ。
新婦の顔は真っ赤になる。

人と光に包まれて
新郎新婦は歩いていく。
拍手を送る者。
写真を撮るために
席をはなれる者。
親族の目に光るもの。

新郎は笑顔がなく、
緊張の面もちで
わきを通りすぎる。
音楽、拍手、歓声
様々な音が舞い散る嵐のなか、
俺の耳は
信じられない音をひろった。

俺の隣に座る新婦の友人は
刺身を吹き出した。
せき込み、むせ返り
水を飲み、息を整えて、
涙目で俺をみた。
俺は黙ってうなずいた。

人生最高の花道で
新郎のズボンから聞こえた音。


「ブッ!」


Onara
強烈なスモーク。

text by 副編

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2006年9月14日 (木)

編集長の北海道旅日記①

Hokkaido_01_1

8月25日 
●出発

出発は14時の便。
ケチって格安のツアーにしたため、微妙な時間の出発になってしまった。
札幌に到着するころにはすでに夕暮れだが、まあ良い。今回は四泊五日の旅。時間には余裕があるのだ。
荷造りを済ませ、連れ合いとともに出発。
13時30分羽田着。結構ぎりぎりだ。
急いで搭乗手続きを済ませ、お土産を買っていざ出発、のはずだったが、指定された搭乗口までが異常に遠い。歩く歩道を5〜6本乗り継いでもまだ着かない。
これも格安ツアーの洗礼なのか。
決してそんなことは無かった。チケットを良く見ると、そこには私が向かっている搭乗口の番号とは微妙に違う番号が。
当然のように全力疾走で今来た道を戻る怪しい二人組。
迫りくる出発時間。遠くのほうでかすかに聞こえるアナウンス。
「最終のご案内です。ANA○○○便札幌行きは・・・」

text by 編集長

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2005年12月26日 (月)

恋愛のボーダーをこえる男

「サッカー選手で言えば、
 どれくらいのブス度なの?」

と、言う私の問いに、編集長は即答した。

「ジダンクラスのブスかな」

フランスワールドカップのあった1998年。編集長はバロンドールクラスのブス専だった。当時の彼女は、彼曰く「街をいっしょに歩けないような顔」で「でもスゴいテクを持つ女」だった。「顔?電気消せば気になんねーよ!」と強気発言をくり返し、その度に私は「風俗嬢じゃないんだから」という反論をのみこんだものだ。彼の語気は強かったが、目には光がなく、視線は空中のどこか一点を見つめていた。そして、小さく「付き合ってるのは、なりゆきだがね」と付け加えた。そんな彼に、その女の名前が本名ではなく源氏名っぽかったことは、もちろん指摘できるわけがない。

次の彼女へ移行したとき、私はまた訊ねた。

「そのデブ度をストライカーにたとえたら、
 どれくらいの選手なの?」

「ロナウドクラス」

日韓ワールドカップのあった2004年。編集長はバロンドールクラスのデブ専に成長していた。彼は、偉大な登山家のような遠い目をして「新しい世界が見えたよ」と言った。「なりゆきだがね」と付け加えるその目に以前のような悲しみはなく、つきあっていることをフィクショナルなものとして捉える境地にあった。その女がホストに入れあげ、借金苦で行方をくらませ、彼のもとにその連絡が届いた時、もちろん彼はさらなる浮き世の境地へと旅立った。「もういいんだよ、もう‥」という言葉を残して。

そして、まもなく2006年。ドイツワールドカップの年が迫っている。養老 孟司などの木っ端識者には知る由もない「ブスの壁」「デブの壁」を乗り越えて、次に挑むは「年齢の壁」。つまり年増に挑むのだ。「つきあったら、狂っちゃいそうなんだよ」という言葉と裏腹に、彼の目はベルリンの壁を乗り越える東ドイツ人のような輝きに満ちていた。そう、編集長は、つねにボーダーに挑戦しつづける男なのだ。ボーダフォンなんかとは比べようもない次元で。

ボーダフォンは「家族割引で家族間のボーダーを超える」などとのたまうが、人と人とのつながりを金勘定で越えるというメッセージ事体が軽薄である。「家族のボーダーをこえる」=「家族間のケータイ料金が減る」=「家族の会話が増える」がどれだけ冷えきった家庭に空しく響くだろうか。業界内では革命的なんだろうが、広告が描くいつもの幻想にすぎない。あれを見て心動かされるのはよほど幸福な人である。

さらに言えば、日清のカップヌードルの標榜する「ノーボーダー」という壮大なメッセージも、誰が必要としている壮大さだろうか。地球的だからってカップヌードル食わない。「カップヌードルに国境はない」というメッセージのスケールは、日清は大きな会社であるという、犬も食えないモニュメントだ。過去にあった広告「hungry?」のほうが、よっぽど「地球的規模だぞ!」という企業エゴをうまく料理し、「ハラ減ってる?」という世界的共通の実感を訴えるものにしていたと思う。

編集長は、いつも胸が張り裂けんばかりの冒険心に満ち溢れ、同時に弱々しい不安を抱えている。だからこそ、この挑戦は、あたたかみのある人間くさい実感としてあなたの胸を打つと思う。

この前、近況を聞いたら、彼は言った。

「最近、その女といっしょに飲んでるんだ。やべえよ」

なにが「やべえ」のか。心して、続報を待ちたい。
2006年、「年齢の壁」崩壊の年。編集長の「つきあったら狂いそうな女」との恋愛が幕を開ける、はずだよね、編集長。

text by 副編

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2005年3月10日 (木)

トイレで逮捕

北海道の空の玄関、新千●空港。編集長は東京へ帰郷するために年数回ここを利用する。たしか、年末頃だったと思う。理由は忘れたが、今回の帰郷に限り 「見送り」として私は同行していた。例のごとく編集長は、人目をはばからない大きな声でわめいた。

 「きた!きた!きた!きた!」

またか、と私は思う。これはウンコサイン。いつも聞いていると少々うんざりしてくるものだ。彼に言わせれば

「今日は特別だ。なんせ一週間くらい出してないからな、スペシャルな奴が来たんだ。すごいぞ。すごいぞ。」

なんだそうです。空港内の人々の視線が痛い。人の気も知らずに、はしゃぎながら編集長はトイレに駆け込んだ。不思議なものでツレがトイレに行くと、自分も行きたくなってしまう。後を追うようにして男子トイレに入った。兄弟らしき少年が二人と、背広のおじさんが一人、それぞれ小便器に向かっている。

小便をしている最中、先に出し終えた兄弟がかん高い声でなにやら騒ぎ出した。声にならない声で意味の分からないことをわめき立て、手も洗わずバタバタとトイレから走り出て行った。何事か、と横を向くと、となりで小便をしているおじさんと目が合った。嫌な予感がして、首だけで斜めうしろを向いた。私は叫 んだ。
  
「ドア閉めろ!」

白いケツを出した編集長がビクリと振り向いた。編集長は耳まで真っ赤になった。彼はいたずらっこのような笑顔を作り上げた、かと思うと、鬼の形相に変り、高速でドアを閉めた。

おじさんと私は、ほぼ同時に小便を終えていた。大便器の方から便所のカギをかけようと必死になっている音が聞こえる。おじさんは手を洗いながら深いため息を吐き出し、立ち去った。

便所のなかには、私と編集長だけになった。まだカギをかけようとやっきになっている。

「大丈夫か」

と、ドア越しに声をかけると、すかさず編集長は答えた。

「カギかかんないんだって。それに、なかなか出ないもんだからさ。だからさ…」

あきれて言葉がでなかったので、便所の外に出た。
背中ごしに

「いや、カギかかんねぇ、ヤベェ、ヤベェ」

という声が聞こえていたが無視した。

便所からすこし離れた喫煙コーナーで一服していると、奇妙な光景を目の当たりにした。トイレに入る男性が皆すぐ出てくるのだ。私はタバコを消し、早足で男子トイレに戻った。予想どおりの事が起きていた。私は叫んだ。

 「閉めろよ!」

白いケツがビクリ。耳まで真っ赤。編集長は鬼の形相でドアを閉めた。声をかけようとすると、察した編集長が先に言った。

 「ちがうんだって、知らないうちにドア開いたんだって。ホントにカギかかんないんだって。それに、なかなか出ないんだって。だからさ…」

 「いま、どうやってドア締めてんの?」

 「手で引っ張ってる」

 「まだ、ウンコ終わんねーの?便秘じゃないの?」

 「便秘?俺が?ハハッ、そんなワケねーだろ、ハッ」

笑い声を聞いていると、心配してた自分がアホみたいで腹がたってきた。

 「お前は、馬鹿だろ。笑ってる場合か」

 編集長はキレた。

 「んなこといってもしょーがねーだろ!いちいちうるせーんだよ!俺の勝手だろ!」
 
 たしかにケツを見せるのは、お前の勝手だ。
 便所を後にして、喫煙コーナーに戻った。
 一服して、しばらく休むことにした。まいっていた。よりによって、たまたま見送りに来た日にこんな馬鹿げたことに巻き込まれるなんて、あーついてない。なんてことを思いながら、空港内を行き交う人々を眺めていた。眺めていると、頭が痛くなって来た。

 1人の男が警官を連れて便所に向かって歩いている。空港内の交番から来たんだと思う。私は今日3度目となる便所に向かった。

 私は警官の視界に入らないように、入口付近で動向を見守っていた。便所の中では、男はどこかへ行ってしまったらしく、警官だけがいて、編集長の入ったドアの前で仁王立ちしていた。警官は40歳なかばと言ったところだろうか、結構ダンディな警官だった。体格もよかった。

 警官はドアをノックした。

 「入ってます」

 と、編集長は答えた。

 「すいません、警察ですけど。ちょっと出て来れますか」

 「………」

 「あのね」警官は慣れた口調でドアに向かって説明をはじめた。「あなたがね、ドアを開けたままで『大』をしているって苦情が入ったんですよ。ちょっと、出てこれますか?」

 「カギが壊れてるんですよ」

 「開かないんですか」

と、言いながら警官はドアを勢いよく引っ張った。ドアノブを握っていた編集長が中腰のまま、ケツを出しながら引きずられるように出てきた。警官があわててドアから手を話すと、もの凄いスピードでドアは閉まった。
 編集長は言った。

 「開いちゃうんですよ」

 「では、トイレの前で待ってますから、いいですか。終わったら出てきて……」

 警官が言い終わらないうちに、例の匂いが香ってきた。編集長が大胆にも出し始めたのだ。平静を保ちながら警官がもう一度言った。

 「じゃあねぇ、空港内に交番がありますから、そこで待ってます。後でゆっくり話をしましょう。」

 警官は足早に立ち去った。苦味ばしった顔をしていた。

しばらくして、トイレから引きつった照れ笑いをしながら編集長が出てきた。

 「やべぇよ、どうしよう」

 「交番行くしかねーだろ」

 「うんこで交番いく奴なんているの?」

 「いねえな」

 「飛行機のっちゃったらマズイかな」

 「その程度の罪で高飛びする奴はいねーだろ」

 「いねえな」

 と、いうわけで今度は交番に付き合わされることになった。交番での話をまとめると、

 「二度とこんな事するんじゃないよ」

 である。するわけない。しかし、彼ならやりかねない。
 余談だが、警官からこんな話も聞いた。

 「うんこ」と「うんち」。この二つの言葉には、はっきりとした違いがある。子供がすると「うんち」、大人がすると「うんこ」。大人と子供の境界線は個人差があるが、平均で言うと「中二」。さらに、200gを超えると、もう立派な「うんこ」として認定。野ぐその場合、「うんこ」をしてしまうのは有罪で、三ヶ月以内の懲役となる。尚、5分以内に後始末をすればOK。

 「あなたの場合、前例が無いからね、ちょっと難しいね。」

 と、警官は言った。当り前だ、前例がいたら驚くよ。

 その後、編集長(26)は事情聴取とかるい説教を受け、前科者になった。警官が真剣な顔つきで書きこんでいる調書をのぞくと

 「排便中に確保」

とあって、笑いそうになった。

 最後に、警官は事務的に言った。

 「じゃ、罰金2千円ね」

text by 副編集長


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2005年1月25日 (火)

実録!泣きたいくらいに笑える話

編集長はよく野ぐそをする。どこかれかまわずする。畑でして、農家のおばさんに野菜泥棒と間違えられたこともある。その夜も、編集長はしようとしていた。場所は、彼女の家のすぐ横。

「もちろん俺だって、そこではしたくなかったよ」

と、編集長はその時のことを振り返る。

「でも、トイレを使うと、彼女の親に俺が来たことがバレてしまうんだ」

編集長は、毎晩のように、お忍びで彼女の部屋に遊びに行っていた。窓から出入りして、親には秘密。一度、トイレの水を流す音で見つかって、お父さんに怒られたことがある。でも深夜の密会はやめられなかった。以後、トイレはいつも近所のコンビニですませていた。けれども、その日は事情が違った。

「もう、あまり時間がなかった。くやしかったけどね。爆発寸前ってやつさ」

雪が降っていた冬。月が出ていた夜。編集長は、彼女の部屋の窓から出て、すぐ、した。大雪になりそうな気配だった。雪が全部、隠してくれそうだった。

「俺だって、バカじゃない。それくらい計算のうちだったよ。でもね」編集長は語気を強めた。「悪事なんて、隠し通せるもんじゃない。いいかい。『悪事なんて、隠し通せるもんじゃないんだ』」

次の日の朝、彼女のお父さんが雪かきをはじめた。
雪の中から、お父さんはすべてを見つけた。証拠と、犯人を。

数週間後、看板が立った。

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そして、彼女は、別れを告げた。


text by 副編集長

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2005年1月 5日 (水)

痛ッ!アソコにウィルス侵入?

3・2・1、2005年〜!あけましておめでとう!の瞬間、我がゆるゆる新聞編集長のアソコに痛みがはしった。彼は孤立無援のトイレの中で、じっと堪えた。「なんでおめでたい日にこんな目に合うんだ」と泣き言を言いながらも、決して諦めずに戦う等身大のヒーローがそこにいた。張り巡らされた伏線、激痛の意外な正体、気色悪さ満点のクライマックス、粋なラストシーン‥これは、近年希にみる傑作アクション実話である。

1月1日 「尿道テロ」
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元旦を迎えた夜、そびえたつ男性自身で事件が起きた。おしっこすると軽い痛みが襲ってきた。「いじりすぎたかな」と思った。数時間後、また小便がしたくなった。「尿道が熱っぽい」と思った。もちろん、痛みもあった。でもたいしたもんじゃない。寝て、起きたら、また小便がしたくなった。トイレで気がついた。パンツが黄ばんでガビガビに乾いている。「夢精か?」といぶかしんだが、色が濃すぎる。そのまま小便を出したら、激痛がきた。ヒザから崩れ落ちた。

1月2日 「敵の正体は‥」
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尿意は2時間単位でやってくる。「妙だな」と思いながら、トイレへ行く。激痛。し終わるときが特に痛い。ウニ色の膿が出た。膿は1時間単位であふれ出た。その一日の終わり、部屋には、下半身丸出しでぐったりと横たわる編集長と汚れきったパンツが打ち捨てられていた。もはや尿道は、痛みに完全に占拠された。
編集長は、すぐさまネット検索で情報を収集。
「尿道にウィルスが入り込むと、不快感、分泌物が出るなどの症状が出ます。黄色い濃い膿が出て、排尿時に痛み、頻尿などの症状があります。放っておくと熱が出てきます。男性は前立腺炎や精巣炎を起こすこともあります。」(『尿道炎』または『性器クラミジア感染症(Chlamydia trachomatis)』の主な症例より)
編集長は確信を深めた。
「ウィルスが入り込んだに違いない。」

1月3日 「将棋祭りに行こう!」
diehard2.jpg
尿道テロ騒動まっただ中、我らがダイハード(なかなか死なない男)は病魔の正体を悟る。
しかし焦りはない。編集長は煙草に火をつけ、ゆっくりとした動作で部下に電話をかけた。
「どうやらウィルスが尿道に侵入したようだ。」
「病院に行ったほうが‥」
「それより東急でやってる将棋祭りに行こう」
「‥‥」
「なあに心配するな。中井女流王将の笑顔を見たら、痛みなんてすっ飛ぶさ」
「わかりました」
と言って電話を部下は切った。

1月4日

約束の時間が近付いても、編集長はいっこうに姿をあらわさなかった。部下がケータイを見ると、メールが届いていた。編集長からだ。文面は新たな惨劇のはじまりを告げていた。

「熱出たから家で待機してます」

+ +To be continued + +

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