マンガ

2011年3月 3日 (木)

「バクマン」は、少年ジャンプの広告ページです。

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人気だというから、はじめて「バクマン」という漫画を読んだけど、ひどいな。ほんとうに人気が出てると思うと、寒気がする。

中学三年時に才能のあふれる原作と作画がコンビをくむ。才能もある。仕事場もある。彼女もいる。相方は結婚している。認め合うライバルがいる。というご都合主義のサクセスストーリーは、まあいい。漫画を描いて暮らすという、ふつうに考えても波風のない生活には、オプションをたくさんつけないとドラマにはならないだろう。こんなのは、よくあることだ。

ただ本当に気持ち悪いのは、主人公の目指してるものが、地位とか名声とか物質的価値なんである。

赤塚不二夫や鳥山明は、金や地位や名声が欲しくて漫画を描き始めたのかな。きっと、絵を描くのが好きで好きでたまらない子どもが、大人になってもあきらめずに続けてきた結果じゃないのかな。そう、思いたい。

でも、主人公はどんどん汚れていくわけである。

「アンケートで1位をとってやる」
「凄いな。バトル物なのにエコを絡めて
 社会的なアプローチもしてきている」
「あんなやつに負けたくない」
「彼女と結婚するために成功したい」

ほとんどカイジに出てくる端役レベル。
邪念の権化だ。そういう戯画なのか。
描きたいもののない作家ほど、魅力のないものはない。

漫画の裏舞台をリアルに描き出した、とかいうフレコミらしいが、少年たちの心がどんどん汚れていく姿を見せてるだけ。一貫するメッセージは「ジャンプでの成り上がり」である。こんなこと、子どもに伝えたいのか。ろくな漫画家うまれんぞ。

伝えたいことも気持ち悪いが、伝え方も匹敵するくらい気持ち悪い。

ふつう人間は、挫折があって反骨があり、苦労があって野心をもつもんなんだけど。挫折も苦労も薄味だから、子どもが欲求を夢と呼んで満たしていくだけに見える。うすっぺらさ炸裂。「バクマン」に憧れて、マンガ家目指した子どもは地獄を見るぞ。

滅多な事では休載を認めず、休載したら人気があっても打ち切られる作家。アンケート人気のプレッシャーと打ち切りの恐怖に耐え切れずに精神崩壊した作家。担当に追い込まれ漫画家を廃業した作家。躁鬱病の発作から自殺した作家。ストレスが原因で拒食症&栄養失調となり亡くなった作家。多忙を極めて離婚危機、家庭崩壊をおこした作家。病院に行く時間すら取れず執筆不能、連載終了となった作家。原作者への中傷をアナグラムして漫画に忍ばせ、その原作者にバレて、京王プラザホテルに軟禁され、各出版社や漫画家仲間宛に詫び状を書かされた作家…。

ここまでリアルな地獄を描けとは言わないが、圧倒的な「手前みそ感」を打ち消す自浄のためのジャンプ批判は必要だと思う。自社賛美の気持ち悪さが心をかすめながらも「まあ、いいか」とやり過ごそうとする、サラリーマン精神が何より醜く臭い立つ。独裁国家の検閲みたいな直しを入れるんだろな。社員教育とリクルートを兼ねた広告として見れば立派だ。

漫画家という仕事の素晴らしさを、ジャンプ編集部がどうとらえているのかが見えて幻滅する。ジャンプのダメなところを強烈に糾弾するくらいじゃないと、いくら面白くても表現としては「漫画で描く集英社のパンフ」である。

漫画家という職業を支えているのは、精神的価値だと思う。子どもが大好きなマンガと出会って、その時の感動がまだ胸の中に残っているから、漫画家を目指しているんだと思うな。少なくとも、子どもに伝えるべきは、こっちだろう。

どこかに「このページは、集英社の広告です」と書いてくれたら、楽しく読めるんだがね。

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「アンケートか…」じゃねえよ。

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