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2006年10月13日 (金)

土曜日の必殺技

Gantai

土曜の昼、呼び鈴に起こされて、友達だと思って寝ぼけてドアを開けると、片目のないスーツのおっさんが立っていて、宗教の勧誘をしてきた。

白いガーゼをつけた眼帯は治療の余地があるように見えるもんだが、黒い眼帯は「見えません」という意思そのものだった。あれは、つけるのにも勇気がいる。

「おはようございます。少々お時間よろしいでしょうか」

勘弁してくれよ、という顔をしたが、片目のおっさんはおかまいなしで話をつづける。

「○○○の今月号です。なんと、これ書店で売り上げN0.1になったんですよ。差し上げますので、一度ご覧になってください」

表紙は、ぎらぎらした7色の後光に包まれた世界各国の子どもたち、いかにもなデザイン。

本を受け取ったら帰ってくれよ、と思っていたが、片目のおっさんは本をひらき、「まず、見てほしいのは、この章です…」と説明をはじめた。

眠いんだよ、という顔で目をこすったりしたが、このおっさんはおかまいなしだ。神のこと、歴史のこと、戦争のこと、世界の貧しい人々のことについて語りだした。

その間、片目のことが気になってしかたがなかった。黒い眼帯よりも、見せられないものがその奥にあるということだ。例えば、目玉があった部分の闇や、涙を流すときの状態はどんな…

「私の目のことが気になりますか」

突然、だった。
とっさに否定したが、おっさんはたたみかける。

「さわってみますか」

どうしてそうなるんだろう。おっさんは眼帯をはずしそうだった。全力で遠慮したら、また本を朗読しはじめた、何だろうこのプレッシャーは。こんなに嫌な障がい者がいるのか。

「そろそろ、友達がくるんですけど」
「もう少しで終わりますから」

だんだんイライラしてきた。
結局、30分くらい神の話をした。

「悪い悪い、遅れた」

友達がきた。片目のおっさんをみて言った。

「何、知り合い?」

「実は、今日○○○の今月号をご紹介させていただいていて‥」

「これから、合コンなのですみませんが‥」

「すぐ終わりますから」

「だから、これから‥」

「すぐですから」

友達もあきらかにイラついていた。
そして、狭い玄関で腰を
落とし低くかまえ、

ぼそりと言った。

「かぁーめぇー‥」

まさか、と思った。

「はぁーめぇー‥」

おっさんは理解していなかった。

止めようとしたが遅かった。

「波ーーーーー!」


片目のおっさんは友達の両手に押されて、玄関から勢いよくはじきだされた。

Kamehameha

おっさんが体で支えていたドアが
ゆっくり閉まり、
友達はこちらを向いて言った。

「これが出せなくなったら、俺も終わりだよ」

俺たちは今年、28になる。


text by 副編

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