« 2006年9月 | トップページ | 2006年12月 »

2006年10月31日 (火)

幸せな寂しさ〜日ハム優勝記〜

コンビニ、背広の男がケータイを片手にわざとらしい大声で言った。

「いま同点なの!?」

その一言で、店内の空気が変わった。茶髪ピアスの青年は、本を閉じて買物をはじめた。「逆転?ホームランか!」の声に、警備員らしき男二人は双子のように同じ表情で振り向いた。何を買わずに店を出る男。釣り銭を落とす女。慌て出す二人の店員。レジに人がたまりはじめる。

日ハムの日本シリーズ優勝が決定しようとしていた。

家に帰り、テレビをつける。その後は、ご存じの通りだ。稲葉のホームラン。新庄の涙。中継は中日無視。森本にウイニングボール。抱きつく。胴上げ。インタビュー。会見。ビールかけ‥‥選手からファンへ、ファンから選手へ、感謝は何度も交換される。歓声はメッセージを帯びていく。感謝が集まり祝福になる。ありがとうに近いおめでとう。歓声と拍手が遠ざかる。

翌朝、会社へ向かう。くもり空の下、歩道は黄色い落ち葉に覆われていた。エレベーターに乗り、あいさつをし、席に座る。この不思議な感覚を、なんていえばいいんだろう。あんなに熱狂した次の日が、こんなにあっけなく、平凡な日につづいているのだ。

その時、ふいに友だちのことを思い出した。彼は前の晩、結婚するんだよ俺、と電話で言った。結婚を決めた朝も、たぶん彼は普段通りに会社へ通勤したのだろう。優勝の翌日も、ファンはいつもの朝を過ごしたのだろう。引退を決めた新庄にも、変わらない朝が訪れたのだろう。でもその朝は、昨日とは別の新しい朝だ。

あのコンビニの前を通るだけで、昨夜のことを思い出してくる。街の落ち葉を踏む音さえ、小さな幸せの余韻を響かせる。楽しかった日々が終わっていく寂しさは、秋の地面に一枚一枚と舞い降りていく枯葉なのだ。

ファイターズが優勝した秋の北海道は、いま、幸せな寂しさに包まれている。

Ochiba


text by 副編

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年10月24日 (火)

「わがままな女」天皇賞・秋

Sasori
蠍座の女は、とにかくしつこい。

近頃、昔の女から電話がくる。「野球が熱い」と毎晩電話でわめく。しつこい蠍は彼女だけではない。友達の女が「彼が不倫してるみたいなの」とメールで何度も探りを入れてくる。合コンに行くと女二人が蠍座だった。良く言えば情熱的で、悪く言えばやはり猛烈にしつこい性格だった。翌朝、あまりにも勧誘がしつこい朝日新聞のおばさんに「何座?」と聞くと、やはり蠍。

この一週間で五匹の蠍に、偏見という毒を注入された。人は生まれつき星座を持っている。蠍は生まれつき毒を持っている。そう考えると、少し同情してしまうが。

さて、気をとり直して、秋の空を見上げてみよう。秋天・天皇賞秋の季節だ。そこにも星座がある。道営競馬の星、コスモバルクを中心に北海道の夢が輝いている。天には、きれいな月も浮んでいる。アドマイヤムーン。だが、本命としてその光は弱すぎる。

星に願いをかけたとしても、天は女神に微笑みそうだ。京都大賞典で女とは思えない鬼足をみせたスイープトウショウ。そして、ヴィクトリアマイルの初代女帝、ダンスインザムード。ディープという一等星のない秋の盾、女の天下となりそうだ。女難の相かもしれないが。、

今回は、星の導きで、わがまま女に賭けてみる。

天皇賞・秋は、4月10日に生まれたダンスインザムードで。

その日は、和田あき子の誕生日であり、我がゆるゆる新聞編集長の誕生日。
でも考えてみれば、アッコと編集長か。本当にわがままな人がそろってしまった。運だけは強そうだけど、願いをかけてもいいのだろうか。

今夜、蠍の女が電話をかけてきたら、秋天について訊ねてみようと思う。きっと、競馬なんて興味ない、あんたおっさんくさい、とバッサリ斬られて終わるだろう。それでもいい。この秋は、強い女が観たいのだ。

text by 副編


| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年10月20日 (金)

グーグル、グーグル、グーグル

最近、久しぶりに本を買った。
「WEB進化論」by梅田
なんでこんな胡散臭いタイトルの本を買ったかっていうと、帯に引かれたから。


「これは物語ではなく
現在進行形の現実である。
グーグルとネット社会の未来について、
希望と不安が見えてくる」
羽生善治


羽生善治

羽生善治


天才羽生善治


グーグルについて語る羽生。
ネット社会について語る羽生。
ネット社会に希望と不安を持つ羽生。
・・・・・・・


でもさ、この本面白いんだ。


グーグルは自らのミッションを「世界中の情報を組織化し、それをあまねく誰からでもアクセスできるようにすること」と定義している。
——中略——
グーグルが行っているのは、知の世界を再構成することである。
——中略——
権威ある学者の言説を重視すべきだとか、一流の新聞社や出版社のお墨付きがついた解説の価値が高いとか、そういったこれまでの基準をグーグルはすべて消し去り、「世界中に散在し日に日に増殖する無数のウェブサイトが、ある知についてどう評価すか」というたった一つの基準で、グーグルはすべての知を再構成しようとする。

「世界政府ってのが仮にあるとして、そこで開発しなければならないシステムは全部グーグルで作ろう。それがグーグル開発陣に与えられたミッションなんだよね。」


グーグルの開発者って皆、純粋に、本気でそう考えてるんだろうね。
ある意味宗教。

ちょっとグーグルについて真剣に考えてみようかな。
まあ今日だけだけど。
酔っ払ってる時だけね。

text by 編集長

| | コメント (1) | トラックバック (1)

「マルにツキあり」菊花賞

JRAウインズで、手を握りあい、祈るカップルがいた。去る5月のダービー当日だ。なんというか、あきれたのだが、それが会社の人だったから驚いた。

「マルさん!」

呼ばれた男は慌ててふりかえる。そして、俺は見た。マルさんの彼女の…顔を…つき出たアゴを。さらに、マルさんの「しまった!」という表情を‥。

俺は、ダービーはマルカシェンクに賭けていた。マルさんも、自分の名前にちなんで賭けていた。そして敗れた。なぜか、マルさんのせいだ、という気がした。

さて、菊花賞。また、マルカシェンクが出走する。もちろんダービー馬、メイショウサムソンも走る。

俺はマルさんにたずねた。

「菊花賞は?」

「メイショウサムソンだろ」

「またウインズへ?」

「ああ」

「あの彼女と?」

「いや、別れようと思うんだ」

「‥‥‥」

「お前のせいだよ。アゴでてるだけで猪木だとか言うから、そんな風にしか見えなくなってきちゃったんだよ。どうしてくれる?」

「マルさんのほうから、ネタにしてきたんじゃないですか」

「でも、花王のマークはひどい。ほんとうに横顔が月に見えてくるんだ。」

なんだか、冗談とはいえ、申し訳ない気持ちになった。

「ほんとうに、別れちゃうんですか」

「もう俺トシだろ。だから、別れるって言っても、やっぱり、ね」

Kanojo_1

男40。マルさんも、このチャンスに賭けている。
10月22日の菊花賞は、マルカシェンクで。

text by 副編


| | コメント (0) | トラックバック (1)

2006年10月13日 (金)

土曜日の必殺技

Gantai

土曜の昼、呼び鈴に起こされて、友達だと思って寝ぼけてドアを開けると、片目のないスーツのおっさんが立っていて、宗教の勧誘をしてきた。

白いガーゼをつけた眼帯は治療の余地があるように見えるもんだが、黒い眼帯は「見えません」という意思そのものだった。あれは、つけるのにも勇気がいる。

「おはようございます。少々お時間よろしいでしょうか」

勘弁してくれよ、という顔をしたが、片目のおっさんはおかまいなしで話をつづける。

「○○○の今月号です。なんと、これ書店で売り上げN0.1になったんですよ。差し上げますので、一度ご覧になってください」

表紙は、ぎらぎらした7色の後光に包まれた世界各国の子どもたち、いかにもなデザイン。

本を受け取ったら帰ってくれよ、と思っていたが、片目のおっさんは本をひらき、「まず、見てほしいのは、この章です…」と説明をはじめた。

眠いんだよ、という顔で目をこすったりしたが、このおっさんはおかまいなしだ。神のこと、歴史のこと、戦争のこと、世界の貧しい人々のことについて語りだした。

その間、片目のことが気になってしかたがなかった。黒い眼帯よりも、見せられないものがその奥にあるということだ。例えば、目玉があった部分の闇や、涙を流すときの状態はどんな…

「私の目のことが気になりますか」

突然、だった。
とっさに否定したが、おっさんはたたみかける。

「さわってみますか」

どうしてそうなるんだろう。おっさんは眼帯をはずしそうだった。全力で遠慮したら、また本を朗読しはじめた、何だろうこのプレッシャーは。こんなに嫌な障がい者がいるのか。

「そろそろ、友達がくるんですけど」
「もう少しで終わりますから」

だんだんイライラしてきた。
結局、30分くらい神の話をした。

「悪い悪い、遅れた」

友達がきた。片目のおっさんをみて言った。

「何、知り合い?」

「実は、今日○○○の今月号をご紹介させていただいていて‥」

「これから、合コンなのですみませんが‥」

「すぐ終わりますから」

「だから、これから‥」

「すぐですから」

友達もあきらかにイラついていた。
そして、狭い玄関で腰を
落とし低くかまえ、

ぼそりと言った。

「かぁーめぇー‥」

まさか、と思った。

「はぁーめぇー‥」

おっさんは理解していなかった。

止めようとしたが遅かった。

「波ーーーーー!」


片目のおっさんは友達の両手に押されて、玄関から勢いよくはじきだされた。

Kamehameha

おっさんが体で支えていたドアが
ゆっくり閉まり、
友達はこちらを向いて言った。

「これが出せなくなったら、俺も終わりだよ」

俺たちは今年、28になる。


text by 副編

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年10月 3日 (火)

これが、優勝か…道民の感慨

Shinjo_1

地元球団が優勝決定戦をしているのだが、妙にそわそわしていても現実感がない。いつもテレビで見ていたペナント優勝の瞬間は、道民にとってはどこか仮想の世界な感じがして、心の置きどころがわからない。いま優勝しようとしている確かな実感を手にいれようとして、無理に騒いだり焦ったりしているような気がする。

7:30の帰り道、雨の降るなか、急ぎ足になっていた。会社を出る前の映像、中継ぎでダル登場の衝撃が胸に焼きついている。コンビニで弁当を買ったが、温めいらんと家に急いだ。鍵を開けテレビをつけた。NHK総合かよ。なんだこの冷静なトーン。録画しようとしたら、タイトルは「ためしてガッテン!」。こんなタイトルで歴史を残すのは嫌だ。民放はどうした。なんだこの視聴者と局の温度差。信じてたのにTVH。

ダルが抑えて、観客席が映された。ダル、昔試合でユニフォームを忘れたことはもう許す。150km,今季最速のストレート。現代っ子典型の冷めた男かと思いきや、いやいや熱い。ヒルマンは表情がなく、それももはや頼もしい。観客席映らなきゃ、ただのホームゲーム。新庄うつしすぎ。それはNHKの愚をうつしているようなものだ。

継投で武田の久ちゃん。Qちゃんは巨人戦とかテレビに映されると緊張してダメになるという先入観があるが、とりこし苦労。今季は投げ過ぎて、ヒルマンにぶっ壊されるかと思ったが、タフだ。小さな体をめいっぱい使って投げる姿は、気持ちで投げるという言葉がよく似合う。一番の功労者だと思うし、一番すきな選手である。最も地味な選手のひとりであるけれど。

で、9回はマイケル。江夏の記録を抜いた=超えたということは素直に認められんが功労者だということは認めてる。投げる前のお決まりのフォーム、キャッチャーから目線を外し、一度小便を確かめるかのようにうつむいてグラブを股間に当てる、そして手元が袖口から出てくるような卑怯くさいリリース。 いつも自らピンチをつくり、ピンチを乗り切った自分にガッツポーズをした姿に苦笑したものだ。案の上、鷹のカブレラに打たれる。

だが、心配をよそに、9回表1死1塁で、ゲッツー。

ああ、これが、優勝か。

抱き合うマイケルと小笠原。マウンドからカメラは、すぐ新庄へ。ウグイス嬢が迷子を探すかのような抑揚のない声で「北海道日本ハムファイターズは、ぺナントレース全日程を終え優勝しました」とかいうような業務連絡的アナウンス。いつも通りにもほどがある。まあ、いいや、優勝だ。凄いな今年の北海道。松坂が横浜高校が甲子園で優勝して、さらにベイが優勝した時の横浜フィーバーを思い出す。さあ、ビールかけ映像か。

「それでは、全国のニュースです」

ばかやろうNHK!

民放、どうした。地元で映さないで、どこで映す。

ラジオをつける。広瀬が解説。感慨で言葉を失った、広瀬の顔がみたい。ヒルマンが優勝のあいさつ。何言っても、盛り上がるが、話が長いのは勘弁。深夜の「朝までファイターズ」を観たが、田中幸の目がうるんでるのに、暇そうにしてた金子に苦笑。

で、新庄引退セレモニー。生前葬みたいに過去の野球人生を振り返るVTR。流れてきた音楽は、クラプトン「Tears In Heaven」。「おいしいとこ、持ってきます」のハムのCM文句どおり、優勝の感動もすべてSHINJOに食われた。別の意味で悲しい。

Fightea

ファイティーの悲しみの深さには、誰もかなわないだろうけど。


| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2006年9月 | トップページ | 2006年12月 »